コイルやコンデンサを含む回路は、本来は微分方程式で解く必要があります。ところが電気回路の授業では、jωL や jωC1 を使った複素数の計算だけで答えが出ます。その仕組みの中心にあるのがオイラーの公式です。
オイラーの公式
テイラー展開の ex に x=jθ を代入して、j2=−1 を使って実部と虚部に分けると確かめられます。
ejθ=(1−2!θ2+4!θ4−⋯)+j(θ−3!θ3+⋯)=cosθ+jsinθ
図形的には、ejθ は複素平面の単位円上で、角度 θ の位置にある点です。θ=ωt とすれば、角速度 ω で回り続ける点になります。
正弦波を回転する矢印として扱う
交流電圧 v(t)=Vmcos(ωt+ϕ) は、回転する矢印の実部として書けます。
v(t)=Re[Vmejϕejωt]
回路の中の電圧・電流はすべて同じ ω で回るので、ejωt は共通です。そこで変わる部分だけを取り出した複素数
V˙=Vmejϕ
をフェーザと呼びます。振幅と位相をひとつの複素数で持っているわけです。
微分が掛け算になる
フェーザが便利な最大の理由はこれです。
dtdejωt=jωejωt
時間で微分することが、jω を掛けることに置き換わります。コイルの v=Ldtdi は V˙=jωLI˙ に、コンデンサの i=Cdtdv は V˙=jωC1I˙ になります。
| 素子 | 時間領域 | インピーダンス |
|---|
| 抵抗 | v=Ri | R |
| コイル | v=Ldi/dt | jωL |
| コンデンサ | i=Cdv/dt | 1/(jωC) |
微分方程式が、オームの法則と同じ形の割り算になる。これが「交流回路が複素数で解ける理由」です。
例題
インピーダンスは Z=3+4j で、∣Z∣=5。電圧のフェーザは V˙=10 なので
I˙=3+4j10=2510(3−4j)=1.2−1.6j
大きさは ∣I˙∣=2、偏角は arctan(−1.6/1.2)≈−53.1∘。したがって
i(t)=2cos(ωt−53.1∘) A
電流が電圧より 53.1° 遅れる、というコイルを含む回路らしい結果が、割り算1回で出ました。
まとめ
- ejωt は複素平面を回る点で、その実部が正弦波
- フェーザは振幅と位相をまとめた複素数
- 微分が jω 倍になるので、回路の微分方程式が複素数の代数計算になる