授業で固有値を習うと、たいてい「det(A−λI)=0 を解け」という計算から始まります。でも工学で固有値が出てくる理由はひとつで、絡み合った変数をほどいて、1変数ずつの問題に分けられるからです。
絡み合ったシステムの例
2つのタンクの水位、2つのコンデンサの電圧、2つの質点の位置。こうした量 x1,x2 がお互いに影響し合うと、次のような連立微分方程式になります。
dtd(x1x2)=(−311−3)(x1x2)
x1 の変化に x2 が、x2 の変化に x1 が入っているので、片方だけを取り出して解くことはできません。まとめて x˙=Ax と書きます。
もし A が対角行列なら話は簡単で、x˙1=ax1 と x˙2=bx2 を別々に解けば x1=c1eat、x2=c2ebt です。固有値・固有ベクトルは、うまい座標を選んで A を対角行列に見せるための道具です。
定義
A をかけても向きが変わらず、λ 倍に伸び縮みするだけの方向が固有ベクトルです。式を変形すると (A−λI)v=0 で、v=0 の解があるためには
det(A−λI)=0
が必要です。これを特性方程式と呼びます。
例題で解いてみる
1. 固有値を求める。
det(−3−λ11−3−λ)=(λ+3)2−1=0⟹λ=−2, −4
2. 固有ベクトルを求める。
λ=−2 のとき (A+2I)v=0 は −v1+v2=0 なので v1=(1,1)T。
λ=−4 のとき v1+v2=0 なので v2=(1,−1)T。
3. 一般解を書く。 固有ベクトルの方向では、システムは1変数の y˙=λy と同じふるまいをします。だから
x(t)=c1e−2t(11)+c2e−4t(1−1)
4. 初期値で定数を決める。 c1+c2=1、c1−c2=0 より c1=c2=21。
x1(t)=2e−2t+e−4t,x2(t)=2e−2t−e−4t
工学的な読み方
固有ベクトル (1,1) は「2つが同じ向きに動く」モード、(1,−1) は「逆向きに動く」モードです。固有値はそれぞれのモードの減衰の速さで、時定数に直すと τ=1/∣λ∣ なので 0.5 と 0.25 です。逆向きのモードの方が2倍速く消える、と式を見るだけで分かります。
まとめ
- 固有値は「A をかけても向きが変わらない方向」の伸び率
- 固有ベクトルの方向に分解すると、連立微分方程式が1変数の方程式の集まりになる
- 固有値の実部の符号で、安定か発散かが決まる
演習PDFでは、対角化と、2階の微分方程式を行列で書き直す問題も扱っています。